まず、どんな問題なのか
筑駒の社会が難しいのは、知識が難しいからではありません。
5年分を数えてみると、特徴ははっきりしていました。文章や資料、覚えている知識から手がかりを集め、選択肢を一つずつ確かめて、指示されたとおりに最後まで答えをそろえる。この作業がずっと続きます。
試験中に起きていること
「アは正しい」と分かりました。
でも、まだ答えは出せません。
筑駒の社会でよく起きるのが、この場面です。覚えていた知識で一つ目に○をつけられても、問題が「すべて選べ」であれば、残りの選択肢も全部確かめないと答えになりません。
しかも次の選択肢は文章を読まないと決められない、その次は統計の表、そのまた次は歴史の知識、というように確かめ方そのものが入れ替わります。この積み重ねが、筑駒の社会の難しさです。
3問に2問は、一つ見つけただけでは終わりません。
設問97問のうち65問、67.0%が「2つ選べ」「3つ選べ」「すべて選べ」でした。あてはまるものを全部そろえて、初めて丸になる形です。
正しそうな選択肢を一つ見つけた時点では、まだ点数になりません。残りも一つずつ確かめて、指定された数、あるいは正解を全部そろえる必要があります。
設問97問のうち65問
答えを全部そろえて選ぶ形式
資源を言い当ててから、その資源の説明を2つ確かめる
統計資料から資源を言い当てる答えと、その資源についての説明で誤っているものを複数選ぶ答えに分かれます。
5つの府県を言い当てたうえで、「すべて選べ」に進む
統計表から5つの府県を一つずつ言い当て、そのうえで表に出てくる地域の説明から誤っているものをすべて選びます。設問は1問ですが、答えは6つ必要です。
三つの時期それぞれで「あてはまる出来事をすべて」選ぶ
時代を一度判断して終わりではなく、期間を変えながら「すべて選べ」を3回繰り返します。
しかも「すべて選べ」は、5年続けて出ています。
正解がいくつあるか書かれていない「すべて選べ」は、2022年から2026年まで毎年出ています。5年間で14か所ありました。
この形式では「だいたい二つくらいだろう」という勘が通用しません。選択肢の一つひとつを別々の○×問題として解いて、最後にそろっているか見直すことになります。
防災・災害対応の説明を、一つずつ確かめる
防災の知識を使い、示された説明のうち正しいものを漏れなく選びます。
三陸沿岸の地理を「全部正しいか」で見ていく
地形・産業・交通と、別々の知識を選択肢ごとに細かく確かめます。
直前の参議院選挙を、しくみの知識と事実で確かめる
2025年の参議院議員選挙についての複数の説明から、正しいものをすべて選びます。
だからといって、覚えなくていいわけではありません。
159個の答えを「何で決まるか」で分けると、覚えている知識だけで決まるのは58個(36.5%)。残りの101個(63.5%)は、その場の文章や資料を見ないと決められません。
ですから「暗記か、思考か」という話ではないのです。基礎の知識は持ったうえで、その場で渡された文章や資料と照らし合わせられるかどうかが問われます。
知識は必要。
でも、知っているだけでは取り切れない。
独自分類では 58/159(知識だけ)と 101/159(文章・資料が要る)
古墳の知識だけで飛びつかず、本文も読んで確かめる
一般的な知識だけでは迷ってしまう選択肢を、東京について書かれた本文と照らして、正しいかどうか判断します。
AIの答えを「正しそう」で受け取らない
AIが出した答えを、本文と社会科の知識の両方から確かめて、おかしいところを見つけます。
工業出荷額の表から、鉄鋼・化学・食料品を見分ける
県別の順位の並びを読み、どの産業がどこに多いかという知識と照らして、三つの工業を見分けます。
筑駒の社会では、確かめ方が途中で変わります。
設問97問を、わざわざ答え159個まで分けて数えた理由がここにあります。一つの問題の中で、場所を答えたら次は時代、本文を読んだら次は知識というように、見るものが入れ替わるからです。
いちばん極端なのは2025年の大問3問6で、設問としては1問なのに、答えは14個必要でした。7つの文それぞれについて、場所と時代を別々に答えます。
筑駒の社会で何度も繰り返す手順
7つの文を、場所と時代の両方で答える
文ごとに地図上の場所を答え、さらにその時代も答えます。7×2で14回の判断になります。
四つの場所を分けたうえで、同じ種類の別の場所まで答える
4か所それぞれが何の悲劇だったかを分け、さらに同じ分類にあたる別の場所を選びます。設問1問で、答えは8つです。
統計表から三つの県をそれぞれ見分ける
米・工業・自動車・漁獲量の組み合わせを見比べて、神奈川・山梨・千葉を別々に言い当てます。
記述は出ますが、筑駒の社会の中心ではありません。
短い説明を書かせる問題は、5年間で8問。159個の答えのうち5.0%です。長い文章をたくさん書かせる試験ではありません。
出たときには、本文の要点や「なぜそうなるのか」を短くまとめる力が要ります。ただ量で見れば中心は選択問題ですから、先に手をつけたいのは選択肢を細かく確かめる練習のほうです。
5年間で出た記述の数
8 / 159 = 5.0%
改元に使われた「銅」の意味を、約10字で説明する
歴史の知識を、決められた短い字数に収めて説明します。
水俣病とPFASの共通点を、約20字でまとめる
二つの文章を見比べて、共通しているところを一文にまとめます。
注目を集める情報ばかり広がると何が困るのかを、30〜40字で説明する
本文に書かれた仕組みをもとに、注目を集める情報が優先されると情報の質に何が起きるのかを、字数内でまとめます。
筑駒の社会で求められること
数えて見えてきたのは、もっと具体的な4つのことでした。
知識を持っている
しくみ・地名・歴史の事がらを正確に覚えている。知識だけで解ける問題も58個あります。
手がかりを見つける
本文・統計・地図から、選択肢を確かめるための手がかりを探し出す。
一つずつ確かめる
「なんとなく合っていそう」で済ませず、主語・時代・地域・しくみを一つずつ見る。
最後までそろえる
「2つ選べ」「すべて選べ」の指示を守り、選び漏れなく答案を仕上げる。
筑駒は根拠を「見極める」学校。
ですから筑駒の対策では、過去問を解いて丸をつけて終わりにせず、「どこを見て○にしたのか」をお子さん自身の言葉で言ってもらう練習が効きます。