第1部|読む
数字だけでなく、「どんな考え方か」を見ながら考える。
開成理科の特徴は、用語を知っているかどうかだけでは見えてきません。ここでは平均点の動きと、5年分・答え170個の中身を交互に見ていきます。
平均点は年で動く。差は毎年5点前後残る。
理科は70点満点。受験者平均は2022年48.6点〜2023年56.9点のあいだで動きます。合格者平均との差は5年平均で約5.3点。
理科だけで大きく逆転する科目ではない一方、取りこぼしがそのまま差として残ります。だから「難問を当てる」より、「考え方の型を落とさない」ことが先です。
合格者平均−受験者平均
5年平均
受験者 48.6 / 合格者 54.0
差 5.4点。この5年で受験者平均が最も低い年。
受験者 56.9 / 合格者 61.5
差 4.6点。受験者平均が最も高い年。
受験者 48.7 / 合格者 55.0
差 6.3点。直近年度でも差は残ります。
5年でいちばん多いのは「基礎知識」。ただし「数で考える」力も厚い。
問われている力で見ると、基礎知識66個(38.8%)。次いで数で考える43、位置と時間の変化18、図や言葉で表す16です。
基礎知識は最多ですが、それだけで終わりません。資料を読み、数の関係を整理し、位置と時間の変化を更新する工程が重なります。
基礎知識
66 / 170問
温度差から平均変化速度を計算する
水Cの5分ごとの温度差を求め、基準区間の半分以下になる最初の区間を特定する。
餌の提示間隔と処理時間で摂取量を出す
大餌・小餌の処理時間と提示間隔から、60秒間の摂取量を時系列で計算する。
鏡の最小長を視線の交点から求める
2つの像を同時に見るために必要な鏡の長さを、幾何の関係から求める。
つまずきの上位は知識不足ではなく、「比べ方」「位置・向き」「変化の途中」。
5年分・答え170個のつまずきでは、似た知識の取り違え45/比べる相手の取り違え29/位置や向きの取り違え19が上位です。
用語の取り違えに加え、比較軸のずれや位置や向きの取り違えの更新ミスが重なります。知識の有無だけでは説明できません。
開成理科は、覚えた知識を
「どの条件で」「何と比べて」使うかを見ている。
気温グラフに合う日照・降水を対応付ける
形の似た複数グラフから、対応するものだけを選ぶ。比較軸がずれると誤答になる。
文字「成」の鏡像の見え方を選ぶ
紙面の上下を固定したまま鏡に向けたとき、左右反転がどう起きるか。
大餌を多く取る理由を処理時間の考えで説明
小餌を見送ることで同時間の摂取量が増える、という関係を説明する。
単元は4つに分かれるが、求める力は横断する。
単元の上位は動物・昆虫・生態30個/気象・地層・地震24個/力・ばね・ふりこ・ゴム23個/水溶液・物質22個(答え単位)。
題材は違っても、温度変化の予測も、鏡の作図も、採餌の計算も、「条件を固定して関係を動かす」点は共通です。
- 30 動物・昆虫・生態
- 24 気象・地層・地震
- 23 力・ばね・ふりこ・ゴム
- 22 水溶液・物質
室温を35℃に変えたときの温度変化を予測
周囲との温度差という同じ考え方を、条件を変えたあとに持ち替える。
鏡①・鏡②の順に像を段階作図
一回の反射で終わらず、像を次の入力にして更新する。
大気から出ていく熱量の時間変化を作図
太陽からの熱量と気温の増減を用い、出ていく熱量の曲線を描く。
開成が求めていること
具体的な問題まで見ると、開成理科に必要な力が見えてくる。
資料を読む
気温・日照・温度表などから、答えに使う値と傾向だけを取り出す。
数で考える
変化速度・摂取量・鏡の長さなど、数の関係を式や比にして扱う。
位置と時間の変化
鏡像・天気の前後・操作の順序を、基準を固定したまま更新する。
実験で確かめる/図や言葉で表す
測定条件の妥当性を判断し、作図や短文で指定形式に出す。
ここまで読めば、開成理科の難しさは難問の多さではなく、条件を読み、整理し、基準をずらさず、指定形式で出し切ることだと分かります。